糖尿病ソリューション
糖尿病は人生の”トラブル”です。正しい知識で問題解決(ソリューション)を。一つの病名のもとで、各自別々の問題を抱えているのです。
グリセミック指数の使い方
W.奈美江さん、お便りありがとうございました。多くの皆様からもグリセミック指数(以下、GIとする)についての問い合わせを頂きました。ご一緒にもう少しGIについて考えてみましょう。
サイエンスかスキルか
『指数』として具体的な数値になるととても科学的にみえますが、元来はひどくバラつきの大きなもので、GIを各食品に特有の数値と考えると間違いの元になります。
その上、GIの検査方法もまちまちで、その結果も千差万別です。
たとえば1本のバナナが完熟度によってGIの価が2倍も変わるという報告があります。はたして、これがサイエンスと言えるでしょうか?
また、初めてGIのことを知った人は、食品成分表のように全食品についてのGIがどうして無いのか疑問に思うでしょう。
実は、それはとても出来ない相談なのです。
たとえばキュウリのGIを調べようとすると、何と5kgものキュウリを一度に食べなくてはなりません(無水ブドウ糖75gに対して)。
ニンジンが高いGIなのはよく知られていますが、これもどうやって調べたのかよく分りません。
レファレンスを75gの無水ブドウ糖とすると、生のニンジンを1kg弱も短時間でかじらなくてはなりません。私も実験してみましたが、残念ながら午(うま)年生れではないので、ジューサーで搾ってみました。そうすると、なるほど"ドーン"と血糖値が上がるのです。
しかし、フランス料理のクリュディテ(生野菜のオルドゥーブル)のようにドレッシングであえた生ニンジンは決してこんなに高いGIにはなりません。オイルが入るからです。
ピッツァのGI?
GIというのは『等量の炭水化物を含む食品同士を比べてみるとこうなる』という、いわばバーチャル空間でのランクづけです。
現実の食事は肉ありケーキあり、チャーハンありの複雑系ですからGIだけで血糖コントロールが出来る訳もないのです。
W.奈美江さんはイタリアン・ピッツァが大好きでしょう?でもピッツァは食後の血糖上昇がとてもトリッキーで有名ですね。高脂肪食だからです。
夕食にピッツァを食べると、就寝時には異常が無くても翌朝の空腹時血糖がとても高かった経験はありませんか?ご承知の通りこれはGIのせいではありません。私の友人(スペイン人で1型)は、こんな時には食前のボーラスインスリンを1/4にして残りを食後1時間に打っていました。私は医師ではないのでスライディング・スケール・インスリンについてはあまり書きたくないのですが、Wさんがイタリア料理を愉しめるように参考までにお知らせいたします。
GIは難しいコンセプト
話を少し整理しましょう。
私はマクロ的見地ではGIの考え方はとても有意義だと思います。
しかし、細部にわたって一つひとつの食品を考えるとかなり奇妙にみえる一面もあるのです。それゆえ、アメリカ糖尿病協会(ADA)も「GIは難しいコンセプトで、これを基にして食事療法を組立てることは薦められない」との立場をとっています。
『GI』は数値そのものをあまり大きく評価しない方がいいと思うのです。
それよりも食生活のBehavior Change、あるいは新しいライフスタイルの確立に応用すればとても有効な手段となります。
真っ白いパンが血糖を急激に上げるのなら、これからは全粒粉パンにしよう。豆料理や野菜をもっと食べよう。etc…お気づきでしょうが、これは糖尿病食というよりヘルシーな食生活そのものなのです。
先月のDiabetes Care(アメリカ糖尿病協会、2001,JULY,24:1137-1143)にも『GIの低い食事が1型の子供達にも良かった』という研究が発表されていました。
カロリー計算と食品交換表を使った従来通りの食事療法よりも、大切なポイントを2~3点押さえれば特別な食事計画を考えなくてすむGI主体の食事の方がヘモグロビンA1cの結果も良くて、家族全員の『生活の質』も高いという結論です。
執筆者がオーストラリアのGI派ですからこういう結果は予想されますが、とても緻密なリサーチデザインから得られた信用度の高い論文だと思います。
要するに炭水化物の質と量を管理すれば家族と同じ食事でいいので、食習慣として守るのは容易なのです。
グリセミック・ロード(Glycemic Load)
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この公式が一番大切なものです。どのくらい血糖値を上昇させるかというのは、食べた炭水化物の質(GI)と量の積であるのは容易に理解できます。
疫学の研究者は、たとえば大腸ガンとグリセミック・ロードとの関係を調べます。正しいグリセミック・ロードを得たいためにグリセミック指数が求められていると言っても過言ではないでしょう。
GIの数値が個々の食品では統一がとれなくても、日本型の食生活の中でウェートを占めている上位10~20品目のものがより正確に測定できれば大いに有用なものなのです。
糖尿病者のための『イタリア料理』
最後になりましたが、イタリア料理に挑戦しているWさんのご参考になればと思って、糖尿病者のためのイタリア料理の本をご紹介します。
La Cucina del Diabetico (ISBN 88-7019-593-7)
イタリア語。東京の(株)文流(TEL 03-3208-5445)で取り寄せられます。本物の糖尿病者用のイタリア料理です。3,588円でした。
Real Italian Food for People with Diabetes (ISBN 0-7615-1493-7)
英語。アメリカの著名な料理研究家が糖尿病になりました。その体験から生まれた本です。15ドル(米国)でした。
