そんな…まさか!なぞのホルモンGLP-1

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更新日 2008-09-07 | 作成日 2008-02-03

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糖尿病ソリューション

糖尿病は人生の”トラブル”です。正しい知識で問題解決(ソリューション)を。一つの病名のもとで、各自別々の問題を抱えているのです。

そんな…まさか!
なぞのホルモンGLP-1

ブドウ糖の『甘いクイズ』をしましょう。

問題;

  • 同量のブドウ糖液を口から飲んだ時と、静脈へ注入した時と、どちらがより多くの『インスリン』が分泌されるでしょうか?

答え;

  • 同量だから、もちろんインスリンも同量。
  • 血管へ入れたほうがロスがないから、絶対に静脈注射。
  • クイズだから、たぶん経口投与。

正解は『経口投与』です。そんな…まさか!
ブドウ糖(炭水化物)は食物として摂ったほうがインスリンが多く出るのです。
そのキーワードがGIPとGLP-1という2つの消化管ホルモンです。

GIP(ブドウ糖の存在下にインスリンを出させるペプチド)
GLP-1(グルカゴンに似たペプチド、タイプ・ワン)

タンパク質を構成する20種類のアミノ酸は鎖状に結合しますが、その数が50以上を『タンパク質』、50未満を『ペプチド』といいます。インスリンはアミノ酸が51個で出来ていますが、血糖を高める働きのあるホルモン『グルカゴン』は29個です。

体重70Kgの人では、10グラムのブドウ糖が血糖値を40mg/dlぐらい上昇させます。普通の食事では100グラムのブドウ糖(炭水化物)を簡単に摂取していますから、体は食事の度に大量のブドウ糖の負荷にさらされます。
そのため、急激なブドウ糖吸収の『早期感知警報システム』が用意されているのです。
まず、十二指腸にブドウ糖が入ってくると『K細胞』というセンサー細胞からGIPというホルモンが放出されます。インスリンの予備的な分泌が始まります。
そして小腸の下部に達すると『L細胞』と呼ばれる別のセンサー細胞からGLP-1というホルモンが放出されます。

このGLP-1は血糖を高めるグルカゴンによく似たペプチドホルモンですが、実際にはグルカゴンの働きを抑えて、膵島ベータ細胞のインスリン分泌を増加させます。更に胃腸の働きを遅くしてブドウ糖吸収のピークを低くしてくれるのです。
糖尿病者にとって願ってもないホルモンですが、残念なことに肥満や糖尿病があると分泌機能が低下するようです。その上、このホルモンは短時間で分解されてしまうので、一日1~2回注射しても効果が続きません。

2001年12月25日にサントリーと三共が『鼻から吸う糖尿病薬』を共同開発すると新聞発表したのは、この『GLP-1』のことです。注射ではなく、点鼻薬として鼻の毛細血管から随時吸入しようというのがユニークなところです。
ただし、発売予定は8年後の2010年ということですから『鬼』も笑い疲れる遠い将来のことです。

GLP-1は従来はホルモンとして研究されてきましたが、今は有力な糖尿病の新薬として注目されています。
インスリン分泌をふやすだけでなく、インスリンを作るベータ細胞そのものをふやす作用があるからです。ベータ細胞の再生と新生です。2型糖尿病は15年以上にわたって少しづつベータ細胞を失っていく病気ですから、GLP-1でブレーキを掛けられれば理想的です。
うれしいことに善玉オイルの『オリーブ油』がこのGLP-1の分泌をふやすことが知られています。

GIP の説明のところに"ブドウ糖の存在下に"という奇妙な表現があります。実はこれらのホルモン(インスリンを静注よりも多く出させるので、特別にインクレチンと呼ばれている)は血糖値が60mg/dl以下になると作用をしなくなります。すなわち、低血糖を起こさないスグレものなのです。
この2社のように直接GLP-1を作って利用しようとするのはむしろ少数派で、他社はGLP-1を分解する酵素を阻害する物質を研究しています。
あるいは、GLP-1より作用時間の長い類似物質(同じ作用をもつ化合物。アナ-ログ)の開発です。

GIPのほうは全く話題性がありません。最新のレポートではGLP-1は『空腹時血糖値の低い糖尿病者』により効果があるそうです。
基本的に2型の薬の話題ですが、1型の食事時のインスリン量を減らせる治験例がイタリア(パルマ大学、内分泌学、2000年)で発表されています。

GIP(Glucose-dependent Insulinotropic Peptide)
GLP-1(Glucagon-Like Peptide 1)